【オルタナ】コロナ禍でのペットブームが招いた「思わぬ悲劇」

07/15/2021配信


新型コロナウイルスによる外出自粛要請で、にわか「ペットブーム」が起きたが、「思わぬ悲劇」も起きている。産経新聞の6月11日付けの記事によれば、ペットショップの売上高が、例年の2倍になるところもあるという。一方で、自粛要請が解除された5月下旬ごろから、都内の動物の保護施設には、毎日のように子犬や子猫が送り込まれてくる。「飼育放棄」の結果だ。世田谷にある保護施設スタッフの言葉を借りれば、まさに異常事態である。(寺町幸枝)


■動物殺処分という現実


ペットの「飼育放棄」については、ペットブームが起きるたびに問題になってきた。日本では、今も年間数万頭の犬や猫が「殺処分」されている。環境省が発表した2018年度の殺処分数は、犬と猫合わせて3万8444体に上る。




飼い主から引き取られた動物もいれば、飼い主不明のいわゆる「野良」に分類される動物合わせて約9万頭の内の40%に当たる。この数字は、ほぼ90%殺処分していた70年代に比べると大幅に下がっているとはいえ、その数は決して少なくない。


広島県で2012年から動物の殺処分をゼロにしようと活動するNPO法人みなしご救援隊「犬猫譲渡センター」(広島市)は、2018年から東京都世田谷区で東京支部を開設し、主に首都圏における飼育できなくなった犬猫の引き取りと、里親探しの活動を行っている。

新型コロナ禍で、カフェの営業時間を短縮せざるを得ない状況が続く一方で、にわかペットブームの波紋で起きている飼育放棄による保護動物の急増も相まり、NPOの経営状況は厳しくなっているという。 佐々木博文理事長は「役員数名が、別に仕事を持ち、毎月不足した活動資金に自己資産を投入しながら活動を続けている」と話す。現在、広島には2カ所のシェルターを抱え130頭ほどの犬猫を保護しており、東京でも毎月5〜10頭前後の犬猫を保護している。

通常同センターに引き取られる動物は「病院や介護施設への入居や、引っ越しを理由に飼育できなくなる動物がほとんど」だという。そのためセンターに預けられる動物も、老犬、老猫が多い。


しかし5月下旬ごろから、状況が変わってきた。


佐々木理事長は「生まれて間もない子犬や子猫を『飼育できない』と相談されるケースが増えてきた。中には、ペットショップから買われて2日でセンターにやってきた猫もいる」と説明する。


「本部のある広島ではまったく起きていない現象だ」(佐々木理事長)というように、この異常な子犬、子猫の飼育放棄は、主に東京で起きているようだ。


中には「天使だと思ってペットショップで購入した犬が、悪魔に見える」と相談してきた人もいるほど、良かれと思って家に招き入れた動物との生活で、精神的に追い込まれるペットオーナーもいる。


筆者自身、6月に保護犬のボランティアとして、シェルターに預けられた4カ月の子犬を1カ月家庭で預かった。排泄の習慣はもちろん、子犬が「散歩」の目的さえ分かっていないことにまず驚いた。人間の赤ちゃんと同様あるいはそれ以上に手が掛かることを、身をもって体験した。排泄の回数が、人間の赤ちゃん同様1日の頻度が成犬に比べて多いことも、実際に生活を共にするまで知らなかった。


「自分が子どもの時に犬や猫を飼った経験がある人が、大人になって自分がオーナーとして子犬を飼い始めて、その世話の大変さに驚く人は多い」(佐々木理事長)


特に今回の自粛生活をきっかけに、家庭にいる時間に動物との触れ合いを求めてペットを求める人が増えているが、初めてペットの飼い主になる人も多く、「ペットとの生活感」の実態を理解していない中で、勢いでペットを購入するケースも増えているようだ。


ほとんどのペットショップでは、子犬や子猫しか取り扱っていない。確かに、子犬や子猫は家の中にいる時間が多いため、世話しやすいと考えがちだ。


だが実際は、排泄の世話の頻度も多く、予防接種、去勢やマイクロチップの埋め込みなどについて考える必要もある。そうした費用負担があることも忘れてはならない。環境省の資料によると、飼育にかかる年間費用は一頭あたり犬で約36万円、猫で約18万円に上る。


■一軒家から20以上の犬の遺体が発見


昨年6月、通称「動物愛護管理法」が改正された。今度の改正での大きなポイントは「ネグレクト」と呼ばれる「飼育放棄・放置」に対して、はっきりと「動物虐待」と明文化された点だ。罰則も以前より厳しくなっている。


ネグレクトでも、警察に対して堂々と「通報」することができるようになったことは、殺処分を減らすための状況改善への第一歩と考えられている。


しかし、法律が改正されてもどれだけ遵守され、取り締まられているのだろうか。この法改正は、ペットビジネスに携わる事業者だけではなく、ペットの飼い主も対象になっている。


NPO法人みなしご救援隊「犬猫譲渡センター」によると、6月下旬、東京都新宿区で20頭を超える犬の遺体が1軒の家から発見された。周辺住民には何年も前から「多頭飼育している家」として知られていたというが、家主が亡くなった後、そのまま数週間取り残され、無残にも全頭亡くなっていたという。

犬の遺体が発見される数日前まで犬の異常な鳴き声が聞こえると、警察や保健所にたびたび通報されていたようだが、「動物=飼い主の資産」という考えに基づくプライバシーの保護といった考えや、縦割り行政による責任の所在があやふやといった問題が重なり、結局一頭も保護に至らなかった。


ペットとの生活で、確かに多くの人が癒されている。しかし、同時に大きな責任を負うことを、もっと意識されるべきだ。佐々木理事長は「はじめて犬や猫との生活を考えている人や、久しぶりに動物を飼いたいと思っている人には、まずボランティアとして、動物との生活に慣れ親しむことを勧めている」と話す。


実際、多くの動物愛護団体は、様々な形でのボランティアを募っている。筆者が体験したような、保護動物の一時預かりで、犬や猫の飼い主経験を積むのも、一つの方法だ。多くの動物たちが、ペットとして幸せな時間を過ごせるよう、飼い主として強い意思を持って動物を飼う必要があることを改めて喚起したい。


◆NPO法人みなしご救援隊「犬猫譲渡センター」のインスタグラム