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【オルタナ】都内で「脳内トラベル台湾」、文化を競争力に


オードリー・タンデジタル大臣を筆頭に、テクノロジー分野での存在感を高めている一方で、芥川賞を受賞した李琴峰(りことみ)の文学作品をはじめ、昭和を感じさせるレトロな雑貨や文化が再注目されている台湾。こうした二つの世界を融合し、発信しているのが、台湾の文化的コンテンツの産業化と国際化を促進する台湾クリエイティブ‧コンテンツ‧エイジェンシー「TAICCA」だ。9月15日まで都内各地で特別イベント「脳内トラベル台湾」を開いている。(寺町幸枝)



■文化の普及だけではなく、ビジネス化に着目


TAICCAは、台湾のデジタルアートコンテンツと、旧来の絵画や文学作品などの芸術コンテンツを合わせて世界に発信する台湾政府系組織(独立行政法人)だ。2019年にできた新しい組織で、その目的は台湾の持つ文化コンテンツを産業化し、対外的に発信していくことにある。


同組織で取り扱うコンテンツは、ゲームをはじめ文化的テクノロジーの応用物から、絵画や出版物、音楽やファッションといった既存のアート分野まで幅広く扱う。留意したい点は、そのコンテンツの普及だけでなく「ビジネスの活用」を目的としている点だ。


今回の「脳内トラベル台湾」では、台湾に関係を持つ書店や小売店において、台湾人作家の日本語訳された書籍や雑貨をポップアップで設置・販売することで、台湾の文化コンテンツの普及活動を担う。


コンテンツ産業こそ台湾の成長産業

ところで台湾の経済部中小企業処(日本の中小企業省に相当する)は毎年白書を発行しているが、2004年の時点でこの文化コンテンツ事業に力を入れる必要性を指摘している。


「大規模な製造業は台湾ではもはや競争力を失っている」という理由が大前提にあり、「台湾の産業界は、知識経済の新しい概念を取り入れ、革新的なデザインを核とした新しい生産分野を開拓する必要がある」と記している。その上で「文化産業が、創造性とデザイン力を強化し、効果的な経営管理方法を採用できれば、大きな可能性を秘めている」とまとめている。こうした考え方が、TAICCA設立に寄与したに違いない。


台湾の独自性を打ち出す手法としての文化コンテンツ


日本人の中で、現在台湾のイメージは二分化しているのではないだろうか。コロナ禍で、オードリー・タン台湾デジタル担当大臣の下、マスク供給の効果的な配布に成功したことにより、「台湾=I T先進国」というイメージが出来上がった。


一方、観光で台湾を訪れたことがある人から見ると、昭和の時代を感じさせる色使いのアート作品の存在や、「大同電気鍋」をはじめ調理器具や雑貨におけるレトロな雰囲気を醸す品々が注目され、妙な懐かしさを感じると関心を寄せる人が多い。


こうしたギャップのあるイメージを、TAICCAはどう捉え発信しようとしているのだろうか。


取材に応じた李 明哲(リー・ミンツゥ)TAICCA院長(CEO)は、「伝統や文化、古くからあるものと、最新の技術や新しい文化は共存できると思っている。台湾に<レトロな文化>のイメージを持っている人には、台湾の最新のカルチャーを知って欲しいし、逆に台湾の映画やドラマなど最新のものから興味を持った人には、台湾の歴史や伝統についても興味を持ってほしい。両方合わせて<台湾>という国の文化であることを広めていきたい」と今回のイベント通じて2つのイメージを「融合させる」狙いを話す。


さらに李院長は「台湾人も日本に対して様々なイメージを持っている。例えば、京都に代表される伝統的な歴史ある街並みと、最新のIT技術。どちらも日本が誇る文化だと認識している」と続ける。

台湾の抱える競争力に対する不安は、実は日本も同様である。IMD(国際経営開発研究所)が毎年発表する「世界競争力年鑑(World Competitiveness Yearbook)」において、日本は、1960年代からバブル崩壊の1992年まで、世界1位を誇っていた。しかし、最新の2020年には34位まで後退している。


台湾の文化コンテンツに対するアプローチから、日本が学べることはありそうだ。


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