去る2月12日、ニューヨークでは世界の四大ファッションショーの一つである「ニューヨークファッションウィーク」があと2日で終わろうというタイミングで、ファッションとテクノロジーを融合させた3Dプリンターが生み出した新時代のデザインを紹介する「MakerBot(メカボット)」主催のファッションショーが開かれた。メカボットは、3Dプリンターを販売するメーカーだ。
縫う時代から、印刷する時代へ。Computational Fashion(コンピュテーショナル・ファッション)という言葉が生み出され、今やファッション業界の「ホットトレンド」として、様々な場面で話題になっている。コンピュテーショナル・ファッションとは、人それぞれの形をスキャンし、それにぴったりのファッションアイテムを、3Dプリンターを用いて製作するファッションだ。最新テクノロジーのおかげで、「パーソナライズ」された商品を、「量産」することができるようになった。現在主にアクセサリー、靴などが量産製品として、市場に出回り始めている。
このユニークな造語そのものを作り、プロジェクトとして世界に広めようと押し進めるのは、ニューヨークのアートとテクノロジーの財団である「Eyebeam(アイビーム)」。そのリーダーは、ファッション学校パーソンズのサバイン・セイモア博士だ。現在は様々なリサーチや、ワークショップなどを開催しており、同組織の活動は実際のファッション業界や3Dプリンター業界に、様々な影響を与えている。
そしてこの流れに、いよいよ大手ブランドも動きを見せる。昨年末に催された、米国大手下着メーカーのヴィクトリアズ・シークレットは、そのファッションショーで人気モデルのリンジー・エリンソンに、3Dプリンターで作成したエンジェルウィングコルセットを着せた。
リンジーのスタイルを完全にスキャンし、その体型にぴったりの雪の結晶を施したコルセットを完成。ショーのスポンサーであるスワロフスキーのジュエルを、刷り上がったコルセットのパーツ一つ一つに丁寧に付け、光り輝く真っ白なエンジェルコルセットを作り上げたのだ。ヴィクトリアズ・シークレット、スワロフスキーのデザインチームと供にコルセットのデザインを手がけたのは、デザイナーのブライドリー・ロッテンバーグ氏。
そして、コルセットの印刷を手がけたのは、ニューヨークベースの3D製品の印刷専門会社「Shapeways(シェイプウェイズ)」。シェイプウェイズは3Dプリンターに関するあらゆるものを取り扱う。実際に製品を販売するオンラインマーケットも持っているし、3Dデザインに従事する人のための、仕事探しをする場を提供するなどのコミュニティ要素もある。
この流れは今やただの「トレンド」では終わらない。これまでのアパレル業界の「大量生産」というビジネスモデルを覆す、大きな流れとなるだろう。ファッションはもともと非常に主観的で、アート的な要素を用いている。しかし、量産という流れの中で、そのアート性を取り除かなくてはならなかった。しかし、3Dプリンターという技術革新により、今後はこの「One and Only(世界でただ一つ)」の商品を生み出しやすくなるのだ。可能性は無限大。今後ファッション業界がどのようにシフトしていくか、楽しみである。
<Punta.jp用執筆/2014年3月4日公開> http://punta.jp/archives/23108