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執筆者の写真funtrap

商機は生活必需品から?欧米クラウドファンディングで見つけた靴下ビジネスの人気

ベンチャービジネスというと、IT関連やロボットといったものを想像するだろう。しかし、実は身近な商材を用いて、新規ビジネスに取り組むケースもあるのだ。その例が「ソックス/靴下」。ファッション業界の中でも、とりわけ足下を覆う靴下は、時代に関係なくトレンド以上に『必需品』的な要素の強いアイテムだ。

先日新規ビジネスの動向を探るため、クラウドファンディングのKicksterter(キックスターター)をあれこれ調べている時に、この靴下という、ありきたりの商材が意外にも新規ビジネスの題材として、欧米で取り上げられていることに気がついた。キックスターターは、2009年に米国で設立された企業であり、ウェブサイトを通じて、様々なプロジェクト用に一般大衆からインターネット経由の資金調達を可能にしたサービスを行なっている。

すでに11億ドル以上の資金を動かし、6万を越えるプロジェクトの資金集めに成功している。但し、同サイトが利用出来る人は、米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、オランダの18歳以上の成人で、銀行口座やID、クレジットカードを持っている人に限る。しかし、プロジェクトの内容をみれば、プロジェクト実行先が日本というケースも多々あり、その広がりが全世界と行ってもいいだろう。

そんなキックスターターのプロジェクトの中でも、ファッション関連のプロジェクトはそこそこ人気があるのだが、中でも同サイトに挙げられている靴下を題材にしたプロジェクトは、過去2年で66プロジェクトあった。そのうち35プロジェクトが成功し、さらに現在も資金調達中が他に5つある。靴下という非常に「ありふれた」商材でも、十分新規ビジネスとしてのチャンスは訪れるのだ。同サイトを通じて資金調達に成功した、米・英のベンチャーオーナーたちに、靴下プロジェクトとキックスターターについて話しを聞いた。

英国ロンドン在住で、2013年の6月にキックスターターを通じて7,500ポンド(約130万円)の調達に成功した「ChattyFeet(チャッティーフィート)のギル・カハナ氏は、靴下業界を選んだ理由をこう語る。「靴下は生活必需品というだけでなく、他のアパレル製品に比べて生産行程がそれほど難しくない。そして自分達のアイデアは、他に売られている商品とは違うと信じて、このビジネスを始めることした。実際我々の靴下が、驚くほど人々に笑顔を届けていることが分かって以来、とてもやりがいある仕事を始められたと思っている」という。

カハナ氏とパートナーのデ・ソウサ氏は、元々デジタル業界で働いていたそうだ。初めて足を踏み入れた業界とはいえ、実際にビジネスを開始し、多くの購買者が靴下については他のアパレル商材とは異なり「試着」せずに購入判断をすることに気が付き、「オンライン販売に向いている商材」だと思ったという。当初は自分たちの資金だけでプロジェクトを進めるつもりだったそうだが、キャッシュフローにつまづいたのをきっかけに、キックスターターを利用することにしたといういう。何よりも、サイトそのものが「非常に人気あるウェブサイト」であるという点で、広告的な要素も期待していたという。

また今年4月に同じくキックスターターで約47,000ドル(約470万円)の資金調達に成功した米国ユタ州在住のTaft Clothing(タフトクロージング)のコリー・スティーブン氏は、「靴下は長い間アパレル業界にある商材で、さらに非常に競争の激しい業界だが、中でもニッチなアイテムであれば、まだまだ競争力のある製品で勝負できると感じた」と話す。

Taftの作る「Wimbleys(ウィンブリーズ)」は、日本では徐々にポピュラーになってきたショートソックス(見えない靴下)。それも主に男性向けの商材で、Taftはこれまでの出回っている無地の物に対して、デザイン性と質の高いショートソックを提供したいと考えた。そして、スティーブン氏は、「キックスターターで資金さえ集れば、自分のアイデアを製品にし、多くの人に販売をするチャンスがあると考えたから」と語る。そして実際にキックスターターを通じて資金を得ただけでなく、「このサイト経由で、何千という人が自分達のウェブサイトや、ソーシャルメディアの写真をシェアしてくれ、それは何ものにも変えられない無料広告となった」と続ける。

いずれのケースも、目標を大きく上回る金額を、短い時間(1~2ヶ月)で調達することに成功している。しかし先述のチャッティーフィートのカハナ氏曰く、キックスターターで魅力的なプロジェクトページを作るには、「ピッチビデオ(PRビデオ)」が欠かせなく、その製作には大きなエネルギーが必要だという。またタフトクロージングのスティーブン氏は、キックスターターのキャンペーンを行なうには、それだけ大きな反響がある可能性が高く、ビジネスとしてきちんとした対応策を準備しておかないと、ブランドにとって逆効果となる可能性がある、と指摘している。

日本の靴下業界では、国内外での靴下需要はほぼ横ばいだが、米国では2011年頃から靴下業界は上向きだ。Yahoo!ファイナンスの調べでは、社員22人の小さなベンチャーソックス会社「Strideline(ストライドライン)」は、2011年から1年間で600%の売上増だし、ポートランドの小さな靴下小売店は、2012年に年間で500万ドル(約5億円)を売り上げているほど。

国が違えば、商機も変わる。身近な商材からベンチャービジネスを立ち上げるというアイデアに、日本の若者たちも、もっと挑戦してみるべきなのかもしれない。


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