ロサンゼルスから東へパームスプリングスを越え2時間ほど走ったところに、「Coachella」という街がある。この街で、毎春開かれる街へ音楽イベント「Coachella」は、西海岸最大の野外音楽イベントとして、年々注目を集めている。人が集まれば、その周辺で様々なビジネスが動くのも世の常。米国の手頃な価格帯で販売されるドラッグストアコスメとして歴史のある「COVERGIRL」は、いち早くこうしたイベントでのキャンペーン活動を開始した。
CoverGirlは、1961年にデビュー以来、1989年にP&G社のコスメラインの一つになり、以後ティーンエージャーをターゲットにした低価格帯の製品を扱うブランド。Revlon、Neutrogena、Max Factor、Make Up Foreverなど、競合ブランドが多い業界だが、CoverGirlは有名人をスポークスマンとして立てるだけでなく、ユニークなマーケティングアプローチにより、その知名度は非常に高い。
例えばCoverGirlがこの春の行なった、「Easy, Breeze, Better CoverGirl Bus」。全体にCoverGirlのデザインを施したバス「The COVERGIRL Bus」を、Coachellaをはじめとした様々なイベントやモールに移動させ、知識や経験豊富な「ビューティーコンサルタント」による、メイクやネイルの無料体験サービスや、サンプル配布を行なうというもの。またイベントには、昨年11月からCOVERGIRLのスポークスモデルとなった、エレクトリック音楽のDJデュオ「NERVO」によるライブなど、様々な趣向をこらした仕掛け作りもされている。
George P. Johnson Agencyという広告代理店とともに、実際のオペレーションを担当したのは、サンディエゴに拠点を置く「Intertactions」というフォーカスキャンペーンが得意なマーケティング会社。1月にハリウッドでデビューして以来、全米の10カ所を回って、テストマーケティングを行なって来た。CoverGirlのスポークスマンの一人である、Ellen DeGeneresのトークショーに登場し、そのキャンペーンの知名度を一気に上げて以来、Facebook、Twitterなどのソーシャルメディアを通して、具体的なイベントの情報を提供してきた。とはいえ、バスの内装が、メイクルームになっている、という形ではなく、実際のサンプリングや体験イベントは、全て屋外あるいはイベント会場で行なわれており、バスはあくまでも移動広告塔としての役割を果たしている。
CoverGirlは、今年他にも興味深いマーケティングを行なっている。現在二つの小児ガンを煩いつつ、「セレブリティのメイクアップアーティスト」になる夢のため、YouTubeにメイク指導をアップロードして一躍有名になった、13歳のタリア・ジョイさんを「Honorary COVERGIRL(名誉COVERGIRL)」に就任させたのだ。タリアの夢であったEllen DeGenresのトークショーに登場させたり、メイク製品や2万ドル(約200万円)の金銭的なサポートを行うと表明した。
▼Ellen DeGenresのトークショーの様子(TheEllenShow YouTube公式チャンネルより)
URL: http://www.youtube.com/watch?v=a6r0Hu6nCKs
タリアさんは、早速4月下旬に発売された、ゴシップ紙の「PEOPLE」に、2ページに渡ってCoverGirlの顔として登場。またCoverGirlのYouTubeなどのソーシャルメディアにも登場し、活動を開始した。まさにチャリティーと、実益を結びつけたキャンペーンを行なっているといえよう。
こうしたニュース要素のあるキャンペーンを、積極的にしかけているCoverGirlは、美しい女性にメイクを施し、ビューティー広告一本で勝負をしている他のブランドに比べ、1歩も2歩先に進んでいるように感じられるコスメブランドだ。
※2013年7月16日午前11時22分(米国時間)、タリア・ジョイさんは13歳で亡くなられました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。[BWRITE編集部一同]
<BWRITE用記事 2014年5月10日掲載>http://bwrite.biz/the-first-coworking-studio-in-the-american-world-of-fashion/