ロサンゼルスでオンライン・チャリティオークションのマーケティングを手がけるAuction Cause(オークションコーズ)が、老舗オンラインオークションサイト「eBay」で、「ファーストアップル・オークション」を行った。目玉のアップル初代コンピューター「Apple-1」の最終落札額は、23万6千ドル(約2800万円)。そして博物館に並ぶほど貴重なパソコンの売上の一部は、「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」の認知活動やその研究費用のために寄付される。
この初代コンピューター「Apple-1」の持ち主は、ノンフィクション作家のロバート・ルーサー氏。アップル製品コレクターで、2004年司法競売にて7,600ドルで手に入れたApple-1をきっかけに、アップルコンピューターに関わる人々を追い求め、その経験を一冊の本「The First Apple」にまとめたというユニークな経歴の持ち主だ。
ルーサー氏はすでに昨年12月、ニューヨークのオークションハウス「クリスティーズ」にて、最初に手に入れたApple-1を、36万5千ドル(約4400万円)で売っている。そして今回eBayを通じて、さらにもう一台のApple-1や、その他、彼のコレクションするアップルのコレクターズアイテムを出品することにしたのは、ルーサー氏の友人が苦しむASLという病気の研究費へ、売上の一部を寄付するためだった。
今回出品されたApple-1は、Atariのプログラマーとして、ビデオゲーム「スター・ライダー」などのゲーム制作に関わっていたことで知られるジョイ・コプソン氏から手に入れたもの。ルーサー氏によれば、「コンピューターは、Apple-1のエキスパート、コリー・コーヘンによって、きちんと作動するかどうか確認済み」とのこと。
オークションは4月13-23日にネット上で開催され、最終的に23万6千ドルの値をつけた。今やスミソニアン博物館やロンドン美術館に並ぶアップルコンピューターの初期型モデルは、これまで2013年にヘンリー・フォード美術館が90万5千ドル(約1億800万円)を支払ったことがあるほどの貴重なもの。
ルーサー氏は今回のオークションに際して「私の友人であり同僚であるスティーブ・アルティスは現在50代だが、すでに10年に及びALSに苦しんでいます。この病気は本当にひどいもので、頭ははっきりしているのに、身体がいうことをきかないというものです。私は彼の友人の証として、今回売上の一部をALS研究へ寄付することにしたのです」と答えてくれた。
なおオークションは、eBayオークションのエキスパートで、高額オークションだけでなく、多くのセレブリティーや財団のチャリティーオークションのプロモーションに関わるAuction Causeにより運営された。エリック・ゲイズン氏が率いるAuction Causeは、特に高額オークションや、チャリティーオークションに際して、適切な入札者を呼び込み、実際にその売買をスムーズに行うためのサポートを専門にしている。今回ルーサー氏が放出したコレクションは200点に及び、大きな金額が動いただけでなく、最終的に落札されたものは、米国内だけでなく、ドイツ、クロアチア、韓国など海外からも購入されたという。
数千万円がクリックひとつでやりとりされるネットオークション。プロの手でプロモーションされ、国を超えて貴重なアイテムが飛び交う、ネット時代を象徴するようなオークションだった。
<Punta掲載記事 2015年5月掲載>http://punta.jp/archives/36215