「電鍋」という言葉を耳にしたことがある人はどのくらいいるだろうか。写真を見て欲しい。なんとも昭和の香り漂う家電だ。台湾の三種の神器=「家電神器」に選ばれているというこのシンプルな炊飯器こそ、台湾人家庭に一家に一台と言われる万能炊飯器「大同電気鍋」だ。最近日本にも本格進出した同社の電鍋は、今や日本人も虜にする家電に成長した。
実は原型は日本の炊飯器!
この電鍋、見ればみるほど懐かしさを感じさせるのはなぜだろう。それものそのはず、この電気鍋を設計から生産を手がける「台湾大同公司」は、かつて日本の東芝と協力関係にあり、東芝が1955年から製造していた「自動式電気釜」に酷似しているからだ。東芝があっという間に電鍋の製造を中止したのに対して、大同公司が電気鍋の販売を開始したのは1960年。さらに80年代になると一気に普及した。
生産開始から50年以上経った現在でも変わらないシンプルな構造は、この電気鍋の良さの一つ。外鍋と呼ばれるの加熱部分に水を入れ、食材を入れた内鍋を置いてスイッチを押すとスチームで蒸らし調理が可能。加熱時間は、水の量で調整する。電気で調理後は、自動的に電源をオフにしてくれるので、外出前に準備をしてスイッチを「ポン」っと出かけても、焦げ付く心配もない。また保温への切り替え設定も可能なので、出来立てスープを食べ時までキープできる。
台湾人に言わせると、「お粥」を作るなら、普通の鍋や今時の炊飯器を使うより、絶対この電鍋で作るのが一番!という。あるいは、蒸し釜をセットすれば、野菜やシーフードを蒸すことも簡単だ。さらに別売りの蒸し器も使えば、中華の定番「点心」を2段で蒸すことだってできる。また内鍋を使わず、外鍋で調理することも可能だ。
かくゆう筆者も電鍋の愛用者だが、子どもが小さい頃は電鍋を利用して離乳食作りに励んだ。内釜の代わりに小さなココットを設置し、一つには米と水、一つには野菜や魚と水などを入れたものを準備。出がけにセットしていけば、帰宅した時には丁度いい出来具合の離乳食が完成している。
使い方次第で様々な調理が可能なのがこの「万能」の言われであり、台湾人の嫁入り道具の一つと言われる所以だろう。
日本人愛好者たちは目下Facebookで情報交換
そんな電鍋をこよなく愛する日本人も増えている。Facebookには、電鍋の愛好者たちのためグループが立ち上がり、レシピを公開したり、電鍋の取り扱いに関する質問や悩みなどを情報交換している。
「大同電鍋愛好会in日本」。この愛好会を運営しているのが、日本在住の電鍋料理研究家のMimiさん。電鍋のレシピ開発を行っている「桃鍋企画」を運営している。そんなMimiさんに、電鍋にハマったきっかけを聞いてみた。
「好きにすればいいんだ」がハマったきっかけ
「2009年に初めての台湾旅行をした際、以前何かの本で見た”いろんなことが出来る鍋”を夜市のあちこちで見かけ、あまりの多さにびっくりしました。昭和女であるワタクシ、実物を見て、初めて見るのに”懐かしい!!”と感じました」とMimiさん。やはり電鍋のレトロ感は、日本人なら誰もが感じるものなのかも。
「初めて手にした時は、使い方もあまりわからなかったけれど、旅行の際に見た電鍋達には煮物、蒸し物、スープやソースなどあらゆる食材が入れられ、何でもできるんだから使い方なんてあんまり悩まなくてもイイんじゃない?自由なんじゃない?と閃き、”好きにすればいいんだ”と思うようになってからというもの、すっかりハマってしまい、何でも入れてはスイッチを入れる日々。無くてはならない存在となりました」。
まさに、無限に広がる電鍋のレシピの可能性と、一方で材料を入れてスイッチを押すだけという簡単でシンプルな振る舞い、そして完成した味のレベルの高さがこの電鍋の魅力。
そんなMimiさんのお気に入りのレシピは、とにかく野菜をたっぷり使った蒸し料理だそう。
「野菜がびっくりするほど甘く濃い味になるんですよ」。